私はバカである。

日々を綴る。徒然に。すべて実話です。私が出会った人、私の周りで起こったことについて思ったことを素直に書きます。小説もどきになっているかもしれません。

しらないし。11月。

少し前の話をしよう。


私は半年以上ぶりに実家に帰った。

バスと飛行機で数時間。長いようで短い旅だった。

飛行機に乗るたびに思うことがある。鉄の塊が飛んでいるのだと。不思議なことだ。人間は空までも自分たちのものにしようとするほど強欲なのか。

地元の空港に降り立つと迎えたのは母であった。

朝早くの到着だったため、ファミレスで朝食をとり実家へと移動した。

田舎は人が少ない。

母とは色々話したが、私が大学に言っていないことを知っている彼女の二言目には学校へいきなさい、だった。

私は適当に聞きながした。

私の生活を知らない母に適当に嘘をつけたが、なんとなくできなかった。罪悪感だろう。

そんなもの抱くくらいなら学費を無駄にするなと、自分でも思う。


久びさに実家に帰ると、私の部屋はない。変わりにその場所は弟のものになっていた。

変わりに元弟の部屋が実家にいる間の私の部屋になった。


1日が終わり、夜。

私の部屋にはベッドがあったが、荷物が積まれ、寝る場所はない。

しかたなく押し入れの布団を出そうと押し入れをあけた。

見覚えのない敷き布団が一枚。ピンク色の布団だ。丁寧にマジックで名前が書いてあった。

それは親戚のものだった。私が高校三年生の頃に入院した親戚だ。

たしか、母方の祖母の姉か妹だった気がする。

何度か病室を訪れたことがあった。

小学生のころはきょうだい揃って可愛がってもらった記憶があった。

彼女の作る山芋の鉄板焼が好きだった。


なぜ、この布団があるのか疑問だったが、その日は気にせずにそれを使った。



翌日は、母と出掛けた。

道中、車内で母に聞いた。


「ばぁどおしてる?」


ばぁとは、例の親戚である。本当はばぁこ前に彼女の住んでいる場所の地名が入るのだが、伏せておく。


「あら、あんた知らんかったっけ?春に亡くなったよ」


来週の予定を告げるかのように母は言った。

あっさりと。


「葬式出なくてよかったの?」


「いいよ。出なくても」


母の叔母にあたる人だった彼女のことは、時々気になっていた。が、地元を離れてから、その後のことは何も知らなかった。

私は、そっか。

という感想しか出てこなかった。

母は長年、看護の仕事をやっている。そのため、誰かが亡くなるということをあまり重く受け止めるところをみたことがない。

職業柄なのか、性格なのか。

娘の私にはわからない。


その話を聞いた私の中に悲しいといい感情はなかった。

ただ、1人、人が亡くなっただけだ。


ばぁの家族には会ったことなかった。いるかどうかも知らない。

ばぁは元気な頃に居酒屋を個人で営んでいた。


幼い頃、遊びに幾度にお菓子をくれた。

お菓子がほしくて遊びにいったいた。

親戚の子たちと家に泊まった記憶もある。



ばぁが亡くなった。


時間が経ち過ぎたのかもしれない。


数年前、恩師が亡くなったときはバカみたいに泣いた記憶がある。その事はまたいつか書こうと思う。

同じ死であるのに。

なぜこうも違うのだろう。


私の彼女に対する愛はとても小さいものだったのかもしれない。


彼女は病院の床で何を考えていたのだろうか。

認知症と言われ、夜病室を抜け出し、家の心配をしていた彼女を私は知っている。

しかし、詳しい病名はしらなかった。



こうして書き綴っていると、なぜか泣きそうになる。

あの日、車内で母から聞いたときに思い出せなかったことを思い出した。

思い出と言うにはあまりにも曖昧な記憶だが、ばぁと過ごした時間を少しだけ振り返る。景色、音、匂い、温度。すべてが、なんとなくだ。

些細な日常の僅かな時間。

私たちはばぁに愛情をもらっていた。見えないものだが、確かにばぁは私たちに愛を持っていた。

私もすくならなず彼女に愛を与えていたのだろうか。


結局、涙は出なかった。こらえるのは簡単だった。これを綴っている場所が電車の中で人目があったせいかもしれない。

それか、やはり故人を思うには時間が経ち過ぎたせいなのかもしれない。。


またいつか墓参りにでも行こうと思う。

けれどそれも忘れてしまうだろう。


そう思う私が嫌いだ。


だから、今はせめて彼女が天国で、眠っていったその先で安らかに過ごせるように祈ろう。


人はいつか死ぬ。


残された私たちはその人の心を知らない。

そして、残したその人は残された私たちの心を知らない。


たとえ、愛があってもなくても。


さよならが言えなかった後悔もなく別れて、その言葉すら届かないのだから。



知らない死は突然だった。

けれど私の日々は変わらない。

朝起きて、1日を過ごし、夜になったら寝る。

何も変わらないのだ。

毎日が続いてく。

人が1人亡くなった。


それは私の親戚だった。

私に愛をくれた人だった。


それだけだ。




では。また。

あくび。